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画像処理

画像は特徴的な信号で構成されています。第一に、画像は時間的・空間的特性を持っています。第二に、画像は多量の情報を持っています。 例えば、テレビビデオの映像を1秒間保存するのに、10MByte以上の容量が必要となります。 これは画像が音声の1000倍以上の容量を持っていることを示しています。 第三に、画質の最終的な判断は多くの場合客観的にではなく、主観的に評価されます。 これらの特性により、画像処理はDSPのサブグループに区分けされています。

医療における画像処理
1895年、ウィルヘルム・コンラッド・レントゲンは、物質を通過することができるX線を発見しました。 これによって体の内部を見ることができるようになり、医療は革新的な変化を遂げました。 医療X線システムはほんの少しの期間で世界中に普及しました。 しかしこれほど明らかな成功を成し遂げたにもかかわらず、1979年代にDSPとそれに関する技術が現れるまでは、 医療X線画像は4つの問題によって制限されていました。 一つ目の問題は、体の重複構造により、対象物が隠されてしまうことです。 例えば、心臓の一部は肋骨によって隠されてしまいます。 二つ目の問題は、必ずしも体の組織を見分けることができるわけではないということです。 例えば、軟組織と骨を見分けることはできましたが、肝臓とそれにできた腫瘍を見分けることはできませんでした。 三つ目の問題は、X線画像がグロテスクに見えることです。生存者のX線画像はまるでその人が死んでいるように見えたのです。 四つ目の問題は、X線が癌の原因になるということです。ですので、X線の使用には慎重かつ適切な判断が必要となります。

体組織の重複構造の問題は、かつてコンピュータ横断断層撮影やCATスキャナーと呼ばれていたコンピュータ断層撮影スキャナーの登場により、1971年に解決しました。 コンピュータ断層撮影(CT)は、ディジタル信号処理の典型例です。 あらゆる方向から照射されるX線は、患者の体を通り抜けて検査を行います。 通り抜けたX線から画像を形成するために、検出した信号をディジタルデータに変換し、コンピュータに保存します。 その情報は体のスライス画像を生成するために使用されます。 これらの画像は依然使われていたものより鮮明で詳細なので、医師の診断と治療に大いに役立ちました。 CTはX線が登場した時と同じぐらいのインパクトを世に与えました。 ほんの数年の間に、世界中の一流病院がCTスキャナーを利用するようになりました。 1979年、CTの発明に貢献したGodfrey N. HounsfieldとAllan M. Cormackがノーベル医学生理学賞を受賞しました。 これは非常に良いDSPの利用例です。

残りの3つの問題は、電波や音波などの登場により解決しました。 DSPはこれらの技術においても、重要な役割を担っています。 例えば、磁気共鳴画像(MRI)は体の内部を検査するために、電波と併せて磁場も利用します。 磁場の強さと周波数を適切に調節しなければ、原子核の共鳴を引き起こします。 この共鳴により第二の電波の放出が起こり、アンテナがその電波を検出してしまいます。 この検出された電波は、共鳴した局所領域の情報を含んでいるので、正確であるとはいえません。 適切に磁場を利用すれば、体の内部構造の情報を正確に取得することができます。 この情報は画像となって医師や患者達に提供されるのが一般的です。 それに加えMRIでは、体組織を明確に認識して区別することができ、動脈を流れる血流の情報までをも取得することができます。 このMRIもディジタル信号処理技術無しでは成り立ちません。

宇宙空間における画像処理
あなたは時々、画質の悪い画像を見たり、手にしたりすることがあるでしょう。これらの画像は多くの場合、無人衛星や 宇宙船から送られてきます。だからといって、火星までカメラの調整に行くわけには行きません。 そこでDSPを使って、過酷な状況でもより良い画質を提供できるようにします。 それは、明るさとコントラストの調整、エッジ検出、ノイズカット、ピント調整、残像のカットなどにより実現されます。 また、奥行きを持った画像は、DSPによってその奥行きが再現されます。 そしてデータベースに保存しておいた画像を組み合わせ、遠くの惑星におけるフライトシミュレーターなどのユニークな方法で利用されます。

商業画像における画像処理
画像の情報量の多さは、一般社会のシステムにとって悩みの種です。 商業システムは安価でなければなりません。しかし、画質を高品質にしてかつ、そのデータ大量に転送するのは難解です。 このジレンマの解決方法の一つに画像の圧縮があります。音声や画像は多くの冗長データを含んでいるので、ビット数を減らす アルゴリズムによって再構築する必要があります。 テレビなどの動画は、現在のフレームと次のフレームの画像がほとんど同じなので、圧縮アルゴリズムを適用するべきです。 ビデオ電話や、コンピュータの動画再生プログラム、ディジタルテレビなどにはこの技術が利用されています。